CASE

導入事例
2025年07月29日

応対内容の要約を生成AIで自動化、アフターコールワークを削減し応答率をアップ

株式会社大丸松坂屋百貨店

日本を代表する老舗百貨店を運営する株式会社大丸松坂屋百貨店は、2023年、ZendeskとAmazon Connectの組み合わせにより既存のコールセンターを変革。次世代コンタクトセンターの実現により、問い合わせの7割を占めていた電話対応を大幅に効率化した。その後も、課題が残る領域に対して施策を講じてきた同社は、応対後のアフターコールワークの削減に向けAIによる要約機能を導入。業務スピードに加え、顧客対応品質の改善が進み、応答率が飛躍的に向上しつつある。

Zendesk×AWS導入事例インタビュー 大丸松坂屋百貨店
株式会社大丸松坂屋百貨店
本社 営業本部 MDコンテンツ開発第2部 オンラインストア担当
森 健太郎氏

背景と課題

2010年、株式会社大丸と株式会社松坂屋が合併して誕生した株式会社大丸松坂屋百貨店は、「お客様や社会への貢献を最優先に考える」という精神に基づき、お買い物を通じて人と、その暮らしを豊かにする価値を提供してきた。時代が変わり、テクノロジーが進化し、環境が一変した今日も、その精神はしっかり受け継がれている。

中期経営計画に沿って、これまで培ってきた百貨店の『店舗』と『人』が持つ強みを基盤に、デジタルを活用したタッチポイントの拡充を図る同社は、2022年、エクレクトとサーバーワークスの支援のもと、ZendeskとAmazon Web Services(AWS)という最新のクラウド技術を組み合わせた次世代コンタクトセンターの実現に向けてプロジェクトを始動。電話、メールでのお問い合わせをZendeskに集約すると共に、カスタマーエクスペリエンス向上を目的としたFAQサイトの改善、チャット対応の開始、AWSが提供するクラウド型コンタクトセンターサービスAmazon Connectとの組み合わせで、既存のコールセンターの変革を実現した。

この一連のプロジェクトを通じて、コールセンターから応対用紙の山が消え、対応状況の可視化、通話時間の短縮、FAQの拡充による自己解決率の向上など、問い合わせ対応の精度において一定の成果を得たあとも、同社の挑戦は続いていた。株式会社大丸松坂屋百貨店 本社 営業本部 MDコンテンツ開発第2部 オンラインストア担当 森健太郎氏は、現状の運用状況についてこう説明する。
「我々が重要視しているKPIの一つに、入電数に対してオペレーターが応答できたコール数を示す『応答率』があります。この数値が昨年比で14.5%改善しました。裏を返せば、昨年はそれぐらい応答できていなかったということになるのですが、打ち手を打った結果として非常に評価できるポイントだと思っています。また、電話での問い合わせ件数が減って、メールやチャットでの問い合わせが増えつつあり、目指すべき望ましい状態に向かっていると感じています」

Zendesk×AWS導入事例インタビュー 大丸松坂屋百貨店

一方、Zendeskの活用によりアナログな運用からの脱却を図るなかで、課題が残る業務領域もあった。それが、応対後のアフターワークと呼ばれる業務である。
「注文に関するご意見など、記録すべき大切なお声も多く、オペレーターは応対中にメモを取り、終話後にZendeskへ入力しています。そこでまずは、通話の録音データを文字起こしした内容を参照しながら入力できる仕組みを整え、業務の効率化を図りました。」(森氏)

選定の理由

一年目はこの方法で様子を見ていたものの、意外にも思うように効率化が進まなかった。文字起こしされた情報をもとに要約するよりも、オペレーターが頭の中にある記憶を辿って要約するほうが早いというのである。さらには、文字起こしのデータをAIに要約してもらい、それをそのままコピー&ペーストすれば事足りるという声を受け、同社はさらなる改善策に踏み切ることにした。

「オペレーターの仕事は、1回の電話対応ごとにアフターコールワーク(ACW)が発生します。このACWを短くすればするほど、その分受電のキャパシティは上がるはずです」と森氏。まさにACWの省力化に向けて動き出そうというタイミングでエクレクトから紹介されたのが、Amazon Connectにおける電話応対の内容をAmazon Bedrockの生成AIを用いて自動要約する機能だった。これは、エクレクトが次世代コンタクトセンターの構築を一緒に進めてきたサーバーワークスが提供するサービスの1つである。そこで同社は、要約の精度に問題がないことを確認したうえで導入を決定。お歳暮シーズンを前に問い合わせが増え始める10月に利用を開始した。

「エクレクトは、我々の業務の理解はもちろんのこと、戦術についても深く理解してくださっており、ニーズを汲み取るセンサーの感度が非常に高いのです。今回も、我々の困りごとを適切なタイミングでキャッチアップして、解決策を提示してくれました。その細やかなフォローに現場の担当者も絶大なる信頼を置いています」と森氏は評価する。

導入の効果

生成AIによる要約機能の導入後は、11月のACWが1件あたり平均で7秒短縮。12月には13秒短縮された。「数値だけ見るとほんのわずかな成果に見えるかもしれませんが、月間約1万件もの電話を取る必要があるとなると、応対可能な電話の数は全然違ってきます。実際、応答率は飛躍的に高まっています」と森氏。

注文に関連する問い合わせについては、もれなく応対内容の要約をZendesk上に残すようにしており、要約の対象となる問い合わせが多いことからも、業務負荷の軽減効果は決して小さくないはずだ。現場からも、切に望んでいた機能として高く評価する声が聞こえており、その効果を肌で実感している担当者は多い。同社では、一人ひとりがACWに費やした時間を可視化し、ACWを短縮できたオペレーターにインセンティブを付ける取り組みを行っており、要約機能を使ったほうが時間短縮につながることも明らかになってきた。「AIを味方に付けるか付けないかで、業務効率に大きな差が生まれつつあるということです」と森氏は指摘する。

また、要約機能の活用は結果的に顧客対応のスピードを高め、ひいては顧客満足度の向上に貢献するであろうことも期待できる。
「お客様からのお問い合わせ内容を関係者が正確に把握し、迅速に対応することは、顧客満足度の向上だけではなく、従業員の負担軽減や業務のスムーズな連携にもつながります。従来は、担当オペレーターが自身の記憶をもとに要約を作成していたため、表現の違いや情報の抜けにより、内容の要点を的確に把握できるようになり、関係者間での共有も円滑になったと感じています」と森氏は語る。

今後の展望

中長期的な視点では、未だ踏み込めていない“攻めのマーケティング”に着手していきたい考えだが、まずはその前段となる取り組みに不可欠として業務の効率化を最優先に進めていくという。ここでもAIの活用への期待値は高く、たとえば、定型化が可能な問合せはAI自動音声で回答するなど、省力化に向けた効果的な施策を模索しています。
「今注目を集めている感情分析にも興味があります。感情分析までは必要ないという声もありますが、結果として効率化につながるものであれば、現場を説得してでも導入すべきというのが私の考えです。エクレクトには成功事例の提示や、お勧めの機能のご紹介など、さらなる効果の創出に向けて当社が出来ることを引き続きご提案いただきたいと考えています。」(森氏)。


生成AIを使った要約機能の導入により、11月のACWが1件あたり平均で7秒短縮、12月には13秒短縮されました。AIを味方に付けるか付けないかによって、業務効率に大きな差が生まれつつあるということです。結果として、応答率が飛躍的に高まっただけでなく、顧客対応品質の向上につながっています。

株式会社大丸松坂屋百貨店
本社 営業本部 MDコンテンツ開発第2部 オンラインストア担当
森 健太郎氏

導入事例

Case Study White Paper

コンタクトセンターのDX化におけるチャネルごとのzendesk具体的活用例と成果

東京電力エナジーパートナー株式会社様

コンタクトセンターのDX化における
チャネルごとのzendesk具体的活用例と成果

ダウンロード

企業の成長に合わせたZendesk活用法 〜スタートアップ企業が選ぶべきカスタマーサービスプラットフォームの 条件とは〜

株式会社マネーフォワード様

企業の成長に合わせたZendesk活用法 〜スタートアップ企業が選ぶべきカスタマーサービスプラットフォームの 条件とは〜

ダウンロード

導入事例一覧へ

トップに戻る